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  • 執筆者の写真FECT 東京探偵事務所

欧州では叩かれない!?日本の「不倫叩き」の根底にあるもの

日本のメディアでは、芸能人や著名人などの不倫が頻繁に取り上げられ、大きな話題になります。でも実は「不倫」に対する考え方やとらえ方は、国によってかなりの違いがあります。今回は、「不倫」を通して見えてくる、日欧の「夫婦関係」や「カップル」のあり方にスポットを当ててみたいと思います。 「不倫」は「新しい恋」と応援するドイツ  日本では有名人の不倫が世に知られると、叩かれる傾向にあります。ところがドイツでは夫婦関係が破綻し、どちらかに新しいパートナーが見つかると、たとえそれが不倫であっても、周りが応援することがそれほど珍しくありません。  最も有名なケースは、ドイツのシュレーダー元首相です。シュレーダー元首相は2018年に5度目の結婚をしました。現在の妻である女性との交際は、夫婦関係は破綻していたものの前妻とまだ婚姻関係にあった時点で、スタートしていました。批判めいた声も一部にはありましたが、ドイツの週刊誌は「シュレーダーは新しい恋を見つけた」という見出しで、シュレーダーと新しいパートナーの写真を載せ、この「新しい恋」を応援するような書き方でした。 

そこには、どんな状況であれ「人が人を好きになることを応援したい」という気持ちが見て取れます。離婚の手続きに入らず、表面上は夫婦を演じながら、陰で延々と不倫をするのではなく、ドイツでは離婚に踏み切り、不倫相手である「新しいパートナー」と結ばれることも多いので、周りは応援ムードになるのかもしれません。出会うタイミングこそ悪かったけれど、「人生を共にしようと思える最愛の人に出会った」と語る人が、ドイツでは意外にも応援されるのです。  余談ですが、ドイツを含むヨーロッパでは、政治家や著名人の不倫を含む恋愛事情がタブロイド誌のネタになることは多いのですが、基本的には「恋愛はプライベートなこと」ですので、不倫をしたことが彼らの仕事に悪影響を及ぼすようなことはあまりありません。 配偶者の不倫が自分の生活に直結  一方、「恋愛と結婚は別」というような発言をよく耳にし、「結婚=生活」という意識も強いのが日本です。  日本では、有名人男性の不倫が世に知られると、不倫相手の女性が叩かれる傾向にあります。なぜかと考えてみると、「結婚=女性が男性に経済的に頼る」という感覚がヨーロッパよりも市民権を得ているからではないでしょうか。そして、そのことが不倫バッシングの遠因になっているのだと筆者は思います。  なぜならば、たとえば妻に収入がなかったり、稼いでいても一人で生きていけるほどの収入に達していなかったりする場合、生活していくためには「自分が既婚者であり続ける」ことが大事になってくるからです。そのため「夫に不倫されて離婚となったら、自分の生活が立ち行かなくなる」と考える女性もいます。 

日本で不倫が叩かれるのは、「配偶者の不倫は金銭的にも自分の生活に直結する」という妻側の不安の表れなのかもしれません。確かに、配偶者の不倫によって離婚となれば、自分の生活が経済的に立ち行かなくなると分かっている場合、今の自分の生活を守りたいと思うのは自然な流れです。こうした背景があるので、多くの女性が「妻」の側に感情移入をするのだと想像します。そして、有名人男性の不倫相手が「(有名人男性の)妻の生活を脅かす存在」とみなされ、バッシングを受けるのだと思います。 「自分の生活費は自分で」が基本の欧州  ドイツを含むヨーロッパでも、女性が男性に金銭的に頼る結婚がないわけではありません。しかし、現代は「一人で食べていける十分な収入がある」女性が主流であり、また社会でもその状態を目指すべきだとされていますので、結婚する場合も離婚する場合も、「生活」のことよりも「恋愛感情」や「相手への気持ち」が重視されます。そのため、夫婦といえども、どちらかに「気持ち」がなくなれば、夫婦関係は解消されるべきだという考えが一般的です。「不倫をしてしまうのは、それ以前の時点で既に配偶者への気持ちがなくなっているから」と解釈されますので、ヨーロッパで不倫が過剰に叩かれることはないのです。  ところで、「気持ち」に重点をおくためには、やはり男女とも一人で食べていける経済力が必要です。そういった意味でも、専業主婦という生き方はドイツでは主流ではありません。  ヨーロッパでは、結婚は恋愛の続きです。なので、お互いが純粋に好きだったら、ずっと仲のよい夫婦でいますが、お互いに好きという気持ちがなくなれば、離婚に踏み切って新しいパートナーと交際を始める人もいます。そして、配偶者との「結婚期間」と新しいパートナーとの「交際期間」が多少かぶっていても、日本のようにバッシングされることはありません。  ただ筆者は、ヨーロッパでは、例えば夫に不倫をされた妻が、時にあまりにも「ないがしろな扱い」をされていることが気になります。ドイツの場合、前述の通り、結婚は生活よりもお互いの気持ちが重要視されているため、不倫をされた妻に対して「夫の気持ちをつなぎとめることができなかったのは、女性(妻)の責任」というような声も時に強く、酷だなあと思うのです。日本に比べて「妻の座」はあまり強くないのかもしれません。 法律の違いも  日本で有名人の不倫が世に知られると、不倫相手が叩かれる背景には、日本では法律上、「不貞(不倫)をされた配偶者が不倫相手に慰謝料を請求できる」という点も大きいと思います。 

ただ、夫婦関係が事実上破綻しており、その結果、別居をしていたり離婚調停中であったりする場合などは、夫婦の片方が「新しい相手」と恋愛をしていても、法律上は不貞にはあたりません。 ところが、世間やメディアは、このような場合でも「不倫」と見なし、騒ぐ傾向にあります。  ドイツの法律では、配偶者が不倫をしたからといって相手に慰謝料を求めることはできません。DV(ドメスティック・バイオレンス)などをのぞけば、「離婚の原因が夫婦どちらかに帰する」「離婚の原因を作った側が責任を負わなければいけない」という考え方はないのです。 不倫相手を叩かないドイツ  そういったこともあり、ドイツを含むヨーロッパでは、「妻が不倫相手を責め、世間が不倫相手を叩く」といった現象はあまり見られません。誤解のないように言うと、ドイツを含むヨーロッパはキリスト教の影響が強かった土地柄ですので、本来不倫には厳しかったのです。しかし、今では「夫婦関係が破綻しているならば、新たな恋愛は自然なこと」というのが一般的な感覚です。ただし、「不倫」をダラダラと長期にわたって続けるのではなく、夫婦関係が破綻し、新しい恋を見つけた場合には、時間と労力はかかりますが、離婚調停に入り、その上で新たなパートナーと生活を共にする、というのが前提です。 

最後に明るい話をひとつ。先ほど、配偶者に不倫された妻に対してドイツの世間はときに冷たい、と書きました。しかし、妻に対して「新しい女性に走った彼のことはあきらめなさい」という声がある一方で、「あなたにも近いうちに絶対に合うパートナーができる!」という励ましの声が多いのもまたドイツです。前述のシュレーダー元首相の前妻であるジャーナリストのドリス・ケップフさんも、現在はニーダーザクセン州の内務・スポーツ大臣のパートナーとなり、幸せそうです。 

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